いつからかCDが主流となりレコードを全く聞かなくなったが、部屋の片付けをきっかけに最近またレコードを聴き始めた。
70年、80年代のレコードが中心で、学生時代にコツコツと買い集めたものだ。何でも便利になったいま、レコードはA面、B面裏返さなくてはならないから確かに不便かもしれないが、CDとの大きな違いは体感して「聴く」ことができるということだ。
まずジャケットをじっくりと見る。解説文を読み、お気に入りの曲を見つける。ターンテーブルにレコードを置き、静かに針を落とす。そして回転するレコード盤を眺めながらスピーカーから流れ出る音を楽しむ。何よりそこまでのプロセスがいい。音も柔らかくて耳にも身体にも心地よい。旨いコーヒーでもあれば、ゆったりした自分の時間を充分に感じられる。
そう考えると木造住宅はレコードに似ているのかもしれない。プレハブに比べて、建てるまでのプロセスが多く苦労はあるのかもしれない。しかし、家を建てると決意したその日から完成に至るまでに得た経験は家に対する愛着を生み、家族が住む家であることを再認識させてくれる。いまでは施工期間が早くて安価なプレハブ住宅が主流のようだが、一般木造住宅においても技術革新によって日本古来の木造軸組工法は進化している。世界最古の木造建築物である法隆寺は今もなお健在である。木造住宅が古いという感覚は間違いである。居心地の良さを追求しようとするならば、やはり苦労なくして得られないのではないだろうか。裏を返せば苦労した分得るものも大きいということだ。
松筑木材協同組合
事務局 財津 由朗